海外駐在員にはなりたいけれど、英語力に自信がないため諦めた、このような話をよく耳にします。一方で、英語は全くできなかったが、会社から異動で自分も思いもよらず、海外駐在員になった、という方も私の周りでは多くいます。今回は、海外駐在員として、最低限必要な英語力を紹介させていただき、どのようにすれば、その英語力が身につくのかも、合わせてご紹介させていただきます。
海外駐在員に求められる英語力は、その駐在地や業界によって異なることがありますが、一般的に以下のレベルやスキルが重要と言われています。
1.日常会話レベル(必須)
海外駐在員には、日常のコミュニケーションに必要な英語力が求められます。一般的な日常会話や基本的なビジネスコミュニケーションを行うためのレベルです。TOEICスコアが400〜600点程度であれば、基本コミュニケーションに問題はないとされることがあります。とは言え、これはあくまでも目安になるため、日常生活や業務でスムーズなコミュニケーションができることが大切です。
私の肌感覚からしても、この日常会話レベルがないと、外国人相手に仕事にならない、となるので、まずはこのレベルは超えるようにしましょう。
では、どのようにすれば、日常会話レベルが身につくのか。海外駐在員に求められる日常会話の英会話力を伸ばすためには、以下の方法を試すことが役立つでしょう。
- 英語圏の環境に身を置く: もし可能であれば、英語圏に滞在するか、英語を話す環境で生活することが非常に効果的です。日常的に英語を使う機会が増え、リアルなコミュニケーションができます。
- 英語での日常生活: 日常生活の中で、英語を使う習慣を身につけましょう。例えば、英語での日記をつける、英語で友達と会話をする、テレビや映画を英語で視聴するなどが考えられます。
- 英会話クラス: 英語学校やオンラインの英会話クラスに参加し、日常会話のスキルを向上させることができます。専門の指導者からリアルな状況での会話スキルを学びましょう。
- 会話相手を見つける: 英語を話す相手を見つけて練習することは非常に重要です。言語交換パートナーを見つけたり、現地の友達と英語でコミュニケーションをとることで、自分のスキルを向上させることができます。
- 言語アプリを活用する: スマートフォンアプリを利用して英語の会話力を向上させることができます。例えば、Duolingo、Rosetta Stone、HelloTalkなどがあります。これらのアプリは、日常会話のスキルを強化するのに役立ちます。
- 読書と聞き取り練習: 英語の本やオーディオブックを読み、聞き取り練習を行うことで、語彙力とリスニングスキルを向上させることができます。これは日常会話のスキルにも役立ちます。
- フレーズや表現の覚え方: 日常会話でよく使われるフレーズや表現を覚えておくと、コミュニケーションがスムーズになります。日常的なシチュエーションに合った表現を覚えておきましょう。
- 自己録音とフィードバック: 自分の英会話スキルを録音し、再生して聞いてみましょう。自己評価を行い、改善点を見つけることができます。また、英語を話す上での発音やアクセントに注意を払いましょう。
日常会話の英会話力を伸ばすためには、継続的な努力と実践が必要です。日常のシーンで英語を積極的に使う練習を行い、自信をつけることが大切です。
2.ビジネス英語能力(必須)
多くの場合、海外駐在員はビジネスコミュニケーションにも対応できる必要があります。ビジネスメールの作成、プレゼンテーション、商談、契約交渉など、ビジネス関連の英語力が求められます。より高度なビジネスコミュニケーションが求められる場合、TOEICのスコア要件はそれに応じて高くなる可能性があります。これは、TOEICスコアが700点以上、あるいは800点以上である場合があるかもしれません。また、前まで企業はTOEICを昇格要件に入れていることが多かったのですが、昨今、コロナ禍でTOEICが開催できなかったことで、TOEICを昇格要件から外す動きが出てきています。代わりに、TOEFL (Test of English as a Foreign Language) や IELTS (International English Language Testing System) などの英語試験が要件となることも少なくないようです。
実際に総合商社では、TOEFLやIELTSなどを採用しているケースを耳にします。これらの試験の特徴として、ほかの試験よりもアウトプット型で、スピーキングとライティングの配点が多く、また、試験時間も長いため、準備にかなり時間がかかります。そのため、これらの試験のスコアは高い英語スキルを示すものとして扱われ、一般的に優れた英語力を持つことを証明するために使用されます。
TOEFLやIELTSを必ず受験する必要はありませんが、外国人と共に働き、海外駐在員として、彼らを引っ張っていくためには、少なくともこのレベルは必要になるかと思います。
では、どのようにすれば、このビジネス英会話のレベルを身に着けることができるのでしょうか。以下の方法とアプローチが有効でしょう。
- ビジネス英語クラスを受講: ビジネス英語専門のクラスやコースに参加することが効果的です。これらのクラスでは、ビジネスコミュニケーションのスキルやビジネス英語の書類の作成方法などが教えられます。
- ビジネス英語専門の学習教材を使用: ビジネス英語に特化した教材やテキストブックを使用し、ビジネス関連のトピックに焦点を当てた学習を行います。これにより、ビジネスで使われる専門用語や表現を学ぶことができます。
- ビジネス関連のニュースや文書を読む: ビジネスニュース、ビジネスレポート、ビジネス関連の書類を積極的に読むことで、ビジネス英語のリーディングスキルを向上させます。また、ビジネスに関するトピックについて議論する習慣をつけることも重要です。
- ビジネス英語の会話練習: ロールプレイやシミュレーションを使ったビジネス英会話の練習を行います。実際のビジネスシナリオを模倣し、効果的なビジネスコミュニケーションを学びます。
- ビジネス英語のコーチング: ビジネス英語の専門家やコーチを利用し、フィードバックやアドバイスを受けることが役立ちます。コーチングを受けることで、個別のスキルを向上させることができます。
- ビジネス英語のメディアを活用: ビジネス英語のポッドキャストやビデオを活用して、ビジネス英語のリスニングスキルを向上させましょう。ビジネス関連のインタビューやディスカッションを聞いて、実際のビジネス状況に対応できるようになります。
- ビジネス英語でのプレゼンテーション: ビジネス英語でのプレゼンテーションを練習し、効果的なビジネスプレゼンテーションのスキルを向上させます。同僚や友人に対してプレゼンテーションを行い、フィードバックを受けることが役立ちます。
- ビジネス関連の語彙を拡充: ビジネス英語に関連する語彙を積極的に学び、ビジネスコミュニケーションに役立つ表現やフレーズを覚えましょう。
- 実践とフィードバック: 実際のビジネス状況でビジネス英語を使用し、同僚や上司からフィードバックを受けることが非常に重要です。実務経験を通じてスキルを向上させていきましょう。
ビジネス英語力を向上させるには継続的な努力と実践が不可欠です。何度も積極的にビジネス英語を使用することで、スキルを向上させることができます。
3.業界専門知識(できれば)
ある業界に特化した駐在員は、その業界の専門用語や概念に精通している必要があります。特定の業界で働く場合、その業界の英語用語や表現を理解し、使えることが重要です。
ただし、このレベルは日常業務で使うことも増えてくるでしょうから、自然と身につく、という点においては、必ずしも、始めから身に着けておく必要はないのかもしれません。
業界専門知識の英語力を身に着けるためには以下のアプローチが有効です。
- 専門用語の学習: まずは、専門分野に関連する専門用語や表現を学びましょう。分野ごとに特有の用語があり、それらを理解し、使えるようにすることが重要です。
- 専門分野の英語文献を読む: 専門分野に関連する英語の書籍、論文、レポート、雑誌記事を積極的に読むことで、専門知識と英語力を同時に向上させることができます。
- 専門家とのコミュニケーション: 専門家や同僚、メンターと定期的にコミュニケーションをとり、専門分野で使われる英語の表現やコンセプトを学びます。質問をし、議論に参加することで専門知識を深めることができます。
- 専門的なイベントに参加: 専門的なセミナー、カンファレンス、ワークショップなどに参加し、専門分野の英語でのコミュニケーションを積極的に行います。また、プレゼンテーションを聞いて、質問をすることが学びにつながります。
- 専門知識に関するプロジェクトを実施: 自身で専門知識に関するプロジェクトを実施し、その過程で英語でのコミュニケーションを行います。プロジェクトを通じて、英語での専門知識を活用し、理解を深めることができます。
- 英語でのプレゼンテーション: 専門知識を英語で他人に説明する練習を行いましょう。プレゼンテーションを通じて、専門知識と英語のコミュニケーション能力を向上させます。
- 言語交換パートナー: 言語交換パートナーシップを結び、相手が専門知識を持つ場合、その分野の英語でのコミュニケーションを行うことができます。
専門知識の英会話力を向上させるには、日常英会話と同様、コミュニケーションを通じて実際に使用することが非常に重要です。日常的な練習と専門知識の習得を組み合わせ、専門分野で自信を持ってコミュニケーションできるよう努力しましょう。
駐在地や職務によって求められる英語力のレベルが異なるため、具体的な要求事項は駐在先や職場によって異なります。企業や組織は通常、駐在員に対して英語能力の評価を行い、必要なトレーニングやサポートを提供することが一般的ですが、それでもこれらのスキルを事前に身に着けておくことは、海外生活での成否を左右します。早めに取り組んでスキルを身につけましょう。